少し前に新聞やテレビを賑わした老後資金2000万円問題について、今回は不動産の切り口でお話します。

 「年金不足を“不動産投資”で補うことは、本当にできますか?」という質問を受けました。その方には「これから年金だけでは生活資金が不足する。だからこそ今、都心のマンションを買って、その家賃収入で年金不足を補いませんか?」というセールスがあったそうです。

 私の回答は「できると言えばできますが、できないこともあります。ただし、電話営業で都心のワンルームマンションを買いませんか?という話があっても、私ならきっぱりお断りします。」です。

 地方の個人に電話営業している時点で、不動産投資のことをよく分からない個人にしか売り先がないのかなと思ってしまいます。本当に稼いでくれる優良物件は、プロの不動産投資家がとっくに抑えているはずですからね。ただそれを言うと身も蓋もないので、チェックポイントを少しだけお教えします。そして不動産投資をしようとするのであれば、購入前に最低でも1回は現地に行きましょう。 

「空室リスク」

 この手の投資話は都心にあるワンルームマンションの一部屋を購入し、その部屋を貸し出すことで家賃収入を得るという仕組みです。一部屋だけですので、空室率は「100かゼロ」になります。当たり前ですが、空室になったら家賃収入はゼロです。

 最低でも近隣の似たようなマンションの空室率は調べましょう。

「収益低下リスク」

 一般に年数が経過すると建物は老朽化し、設備や仕様が時代遅れになります。そうなると家賃を低くしないと借りる人がいません。さらに修繕積立金の値上げや、修繕費の不足分の一括支払いがあるでしょう。家賃収入が減少し、支出が増加するため収益が悪化します。

 近隣マンションの築年数と家賃相場の相関関係を調べておきましょう。

「負動産リスク」

 収益性が悪化したため売却しようとします。そんな収益性の悪いワンルームマンションの、しかも一室だけ…誰が欲しがるのでしょうか?売却金額をかなり下げないと売れないでしょう。それでも売れたらまだいい方です。相続まで売れ残り、配偶者や子供に迷惑がかかるかもしれません。

 細かいことを言うとまだあるのですが、年金不足を家賃で補うどころか、年金で赤字の補填が必要になる可能性もあります。またローンを組んで購入した場合には、教育ローンなど他のローン審査に通らず、必要な資金が借りられなく可能性もあります。 

 私の前職時代の経験ですが、大手企業勤務の方から焦った感じで電話を受けました。内容は「ワンルームマンションを契約した。明日までに手付金を払わないと話が流れる。すぐに住宅ローンを組みたい。」というものです。

 そもそも投資用のワンルームマンションなので、住宅ローンの対象外です。住宅ローンは「自分が住むため」が最大の前提条件です。「自分が住むことにして、借りられないか?」とも聞かれましたが、それは金融機関相手の詐欺になることをお伝えしました。

 不動産投資は利回りがいいのですが、その分なにかと管理が面倒ですし費用もかかります。その分を回収しないといけないので、当然ですが利回りを高くしないとペイできません。

 「不動産投資は利回りがいいから」というセールストークだけで判断しないでください。今は日経平均も過去最高値になっていますので、さらなる利益を目指して不動産投資の勧誘も増えてくるだろうなと思っています。