(1)売買の参考
①売買前の資産評価
一般的な「不動産を購入する、売却したい」という場面です。売主に提示する・売主から提示された価格が【適正な時価】か判断するためには、鑑定評価が有効です。特に会社資産として購入・売却時には、「なぜその金額なのか?」の説明が求められる場合にも、鑑定評価書が役立ちます。
②会社役員間の売買
税金に関係して、【適正な時価】での売買したかの説明が必要な場面です。【適正な時価】より安い(高い)金額で売買したと認められると、贈与税が課される可能性があります。税務署への説明に対し【適正な時価】で売買した根拠資料として、鑑定評価書が役立ちます。
(2)相続・資産承継
①相続税の節税
「面積が大きな土地」「形状が不整形な土地」は、税法上で決められた計算方法でそのまま評価をすると、評価額が高くなってしまうことがあります。そのため、相続税を多く支払わなくてはなりません。不動産鑑定評価を行うことで、評価額を下げることができ、相続税に節税につなげることができます。
②遺産分割
遺産分割時の不動産評価は、不動産業者の無料査定を使うことがよくあります。ただ業者によって査定額はバラつきがあります。私の経験では「地元業者の方が正確だ」とか「大手業者の方が信頼がある」という、不動産評価額をめぐって相続人間の争いもありました。このような場面こそ、国家資格者である不動産鑑定士が役立ちます。
③資産承継(生前対策・事業承継など)
生前対策として資産承継がありますが、会社資産・個人資産とも、承継する資産の中に不動産がある場合には【適正な時価】が必要になります。税務上の問題もありますので、不動産鑑定評価がお役に立つ場面です。また、信託の場合も同様です。
(3)企業会計処理(財務諸表のため)
①減損処理・含み益・含み損
土地は減価償却がなく、例え地価が変動したとしても、購入時の価格がそのまま簿価となります。そのため簿価と時価に差額が発生し、「含み益」「含み損」が発生していることがあります。その企業が「含み益」「含み損」をどれくらい持っているのか?という情報は非常に重要です。そのため、不動産鑑定評価がお役に立ちます。
②賃貸等不動産の時価注記
ある一定の不動産について、その時価を財務諸表に注記しなければならないのですが、その性質上、一般企業においても該当する可能性が高いものです。工場跡地で再開発を期待して持っている遊休地や、一時的に借主のいなくなった建物などが該当します。
(4)適正な賃料
①新規賃料
これから新たに賃貸借契約を締結する場合には、基本的には当事者間で話し合って賃料を決めます。ただ、お互い「適正な賃料」で契約を締結したい場合には、不動産鑑定士の賃料評価が役立ちます。
※一旦賃貸借契約を締結すると、後で「やっぱり高かった(安かった)」と思っても、よほどの事情がない限り、賃料を改定することはできません。
②継続賃料
現在締結している賃貸借契約について、賃料が不相当ではないかと思った時、「いくらなら適正な賃料なのか?」が問題になります。このような時も不動産鑑定士の賃料評価が役にたちます。
特に、賃貸借契約は当事者間の「個別事情」により、必ずしも市場相場なりの賃料で契約が締結されていないことがあります。この場合に、いきなり市場相場なりの賃料に改定することは、かえって不公平となる場合もあります。