「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ社の責任については今更言うまでもないと思います。今回は違う切り口で話してみます。

そもそもですが、世の中には一般顧客向けの市場と、プロを相手にした市場があります。証券市場(株式市場)を例にとると、私たち一般市民も気軽に買うことができる投資信託商品もあれば、機関投資家を対象にした素人が見てもよく分からない商品もあります。これは、一般市民とプロ向けとで分離しているのでいいのですが、その線引きがよく分からない市場もあります。それは「不動産の競売」です。ここからは私の金融機関で融資担当をしていた時のエピソードを踏まえて話をしていきます。

たまに新聞で「競売情報」が載っています。住宅ローンが払えなくなり、担保としていた住宅を手放した後のお話です。競売市場での最低入札金額は、一般的に時価よりも低い金額となっていますので、最低入札金額だけ見れば「安い」となります。そして自分も入札に参加しようとして金融機関に住宅ローン相談に来ます。はっきり言いますが、競売案件は何かと面倒なので相談に来た時点でお断りしたいというのが本音です。

では何がどう面倒なのか?

まず「時間の制約がある」ことです。入札期限までに審査を通さないといけませんが、とにかく時間がありません。その案件だけに集中できればいいのですが、お客様は一人ではないのでそうもいきません。また、仮に応札できた場合にはすぐにお金を入金しないといけませんが、応札決定から入金期限までも時間がありません。もし入金できないと応札自体が流れてしまうので、そのプレッシャーは普通の住宅ローンの比ではありません。

次に「そもそも応札できない」ことです。自分が「安い」ということは他の人もそう思います。業者の方から教えてもらったことですが「いわゆるきれいな物件には業者が何社も絡んでいる。一般素人が入札しても絶対無理だよ(笑)。」ということです。業者はリフォームして高く販売するのでその分高い金額を入札するけど、一般素人はそんなことできないでしょ?…だそうです。素人とプロが混在している典型的な事例です。

これらから「審査も面倒なのに応札できない」という結果が相談時点で見えています。実際は相談時点で「たぶん無理ですよ。」とやんわりと教えてあげるのですが、「それでもいいから」とお願いされたら受付せざるを得ません。で、結果はやっぱり「無理でした」なんですが…。審査をしても融資実行できなければかけた労力と時間が無駄になります。中には最初から個人の競売案件は受付しない金融機関もあるという噂を聞いたことがあります。ある意味それが合理的だと思います。

結論から言います。「利益が出る!」と判断した市場にはプロが入ってきます。個人が出る幕はありません!逆に「利益が出ますよ!」と言って個人を勧誘することは…そこは「利益第一のプロ」が入ってこない市場と言うこともできます。特に不動産市場はプロ向き市場と言っても過言ではないかと思います。まず「?」と思ったら不動産鑑定士に相談してみたらどうでしょうか?