楽天市場の送料無料に関して、優越的地位の濫用ではないかと公正取引員会が楽天に立入調査に入ったというニュースが報道されました。このニュースを聞いて、「買い叩きの末路」について、不動産の視点からお話しします。ただ、皆様のご商売にも同じことは言えると思います。

誰でも、どの業者でも同じ!?

不動産鑑定士の世界でも「買い叩き」はあります。報酬を安くしてほしいとの依頼は珍しい話ではありませんし、入札で最も低い金額を提示した業者に仕事を依頼するということもあります。

不動産鑑定士の世界は、美容師の世界に似ていると思います。例えば、同じ要望を伝えても美容師によって全く同じ仕上がりになることはありません。そこには各人のこだわりであったり、判断や裁量が入ってきます。

不動産の価格にも正解はありません。同じ不動産でも不動産鑑定士によって評価額は異なります。不動産を取り巻く諸々の事柄に対し、どのように解釈・判断するかがあるからです。弁護士も同じですよね。事実は同じだが、人によって結果が異なる…「無罪請負人」なんているくらいですから。

 

買い叩くと損をするのは誰か?

もし、美容師を選ぶ際に支払う金額だけで判断した場合どうなるでしょうか?最も安い金額を提示してきた、例えば1000円カットのように低廉な価格を売り物にする、業者が選ばれることになります。

髪なんかどこで切っても同じ!という考えならそれでもいいでしょう。逆に「ヘアスタイルは大切」「美容師との会話の中で自分に合ったスタイルを見つけたい」と思っているならどうですか?

でも、買い叩くと値段の高い美容室は選ばれなくなります。そうなるとその美容室はお客さんが来ませんから、廃業するか他へ活路を求めるでしょう。残るのは低価格を売りに出した業者だけです。

その業者が全く同じ質のサービスを提供してくれるならそれでもいいでしょう。でも実際は「値段なり」です。要望は聞いてくれますが、基本的は決められた時間の中で切っておしまいです。

買い叩いた結果、自分に合ったいいものを提供してくれる業者がいなくなってしまうのです。さらに、改めて質のいいサービスを提供してもらおうとしても、その美容室も「また買い叩かれるのではないか?」と警戒して、取引してくれないかもしれません。

それで損害を受けるのは誰ですか?質のいいサービスを受けられなくなってしまった…そう、書い叩いた本人です。

 

金額というモノサシだけ判断しないで

楽天のケースでも同じではないかと思います。送料負担が業者負担になると、そこで利益を出せるのは限られた業者だけです。小規模だけどいいものを提供する業者は撤退せざるを得ないでしょう。

その結果、楽天市場にあるものは他(〇mazon)でも買えるものばかり…となれば、楽天市場の魅力は減少し顧客離れが起きるでしょう。買い叩く、つまり優越的な地位を濫用することで、業者が離れてしまいます。一旦離れた業者は戻ってくるか分かりません。

サービスを“金額と言うモノサシ”だけで判断すると、つまり「買い叩くと、一時的には得をするが、最終的には自分が損をするのです。」

長期に渡って信頼関係が築けているのであれば、安易に金額で判断することなく、「信頼関係があるからできるサービス(付加価値)」も、値段で換算しておくといいでしょう。そういう関係であれば「困ったときに役に立つ存在」でいてくれます。