「自治体の評価は何を見ればよいか?」という質問にどのように回答しますか?例えば、待機児童数、人口増減、子育てのしやすさなど挙げられると思います。私は「住みたい街ランキング」かなと思いましたが、実は「地価」ということです。他の自治体と比較する時の統一指標は「地価」であり、「〇〇しやすさ」というのは数値で表現できないため使えません。

また、自治体の歳入の多くを固定資産税が占めています。私の住む磐田市では歳入全体の約20%が固定資産税でした。この固定資産税は「自治体に払うレンタル料」だと思っていただければいいでしょう。

自治体は地域最大の不動産オーナーと言い換えることもできます。多くの市民に不動産を利用してもらい、レンタル料を払ってもらうことで経営が成り立ちます。このレンタル料の目安になるのが「地価」です。地価が下落すればレンタル料も下方に見直しとなり、収入が減少してしまいます。そうすると自治体の経営にもマイナスの影響が出てしまうのです。

また、人口減少も問題になってきています。これはどこの自治体も同じですが「住民税の減少」につながります。住民税も歳入全体の約20%を占めていますので、合計すると約40%の収入源にマイナスの影響が出てきてしまいます。自治体の悩みはそこにあります。つまり自治体も限られたパイ(人口)を巡って競争が起きることを意味します。

人口減少すれば不動産利用者も減る→地価が下がりレンタル料も下がる→大幅な税収減 ということになります。これで市民サービスの維持をしなくてはなりませんので、どれだけ大変なことかわかっていただけるのではないでしょうか。

不動産鑑定士は「地価公示」を通じて「地価」を導き出しています。しかし、ここからは個人的な考えですが、これだけでは不十分だと思っています。自治体の悩みは「地価の下落(レンタル料の減少≒税収減)」です。不動産鑑定士は不動産の専門家であると同時に地価にも精通しています。これを活かして、自治体から仕事をもらうだけでなく、自治体の悩みを一緒に解決できる能力や姿勢が必要であると考えています。自治体も考え抜いて様々な政策を行いますが、不動産鑑定士(地価)の視点を活かしたアドバイスや協力姿勢により、地価の向上に寄与していかなくてはならないと考えます。