今回は、過去に教えてもらった金融機関の友人から教えてもらった理不尽とも思えるエピソードを、リライトして紹介します。

 友人は金融機関で働いています。その金融機関では住宅ローンも取り扱っています。ただ住宅ローンにも様々な種類があり、住宅ローンでも土地建物は担保に取らない、いわゆる「無担保」タイプの住宅ローンも販売されています。

 無担保タイプの住宅ローンは抵当権設定が不要なので、利用する側からしても抵当権設定に係る諸手続きや費用が省けるメリットがあります。金融機関側も物件調査を行う手間や費用が省けます。それでも金融機関では融資にあたって売買契約書や重要事項説明書等の書類が必要になることもあるのですが、今回は最終的に住宅ローンを利用しなかったため起きてしまったトラブル未遂(?)のお話です。

 このお話は、金融機関で働く友人が、物件資料も持ってこなかった顧客から「個人間売買で住宅ローン利用ができるか」の相談を受けただけなのに、理不尽なクレームを受けたものです。

 結論から言うとその顧客が買おうとしていた不動産は、「接道要件」を満たしていなかったため、住宅建築ができなかったということです。間に不動産業者なりが入り宅建士が重要事項説明をしていれば、または不動産鑑定士などの専門家に調査を依頼すれば簡単に防げたことでしたが、個人間売買ということもあり、そこまでやらなかったそうです。

 本来であれば買主が売主に対し錯誤無効(民法95条)なりの裁判を起こして契約そのものをなかったことにすればいいのですが、なぜか矛先がその友人に向いてきたそうです。理由が「相談時に、この土地は接道要件を満たしておらず、建物建築できないから融資不可と言ってくれれば、この物件の購入はしなかった。」からだそうです…。

実際のところどうなのだろうかと思って調べてみたら、最高裁の判例【平成14(受)458】が出ていました。長いので要約すると

「基本的に、金融機関の職員に接道要件を満たしていないことを説明する義務はない。」になるでしょう。ただ、担保価値という意味では接道要件を満たすことが必須になるので、もし物件調査の時点で接道要件を満たさなかったら顧客に話はするでしょう。

 ただ、友人は相談を受けただけで物件調査をしたワケでも融資をしたワケでもないので、なぜ言ってきたのかは不明です。きっと「言いやすいところに言って、補償してくれたら儲けもの」程度だったのかもしれません。言われた方はたまったものではないですが…。