被災後も「住みつづけられる街」とは?

私は静岡県不動産鑑定士協会で、災害対策委員をしています。そこで「不動産の視点」から9年後の被災地を、特に「震災後も、住みつづけられる街なのか?」という視点で見てみました。

震災から命を守っても、被災地が「住みつづけられる街」であり続けることが出来ているのでしょうか?

 

命を守った後は、「マイナスからの復興」が待っている

防災・減災の取組はよく聞きます。私の住む静岡県西部では「津波避難タワー・命山」「防潮堤」などの津波対策が特徴です。

仮に津波から命を守ったとしても、住まいやコミュニティーは甚大な被害を受けます。また職場もそうです。その状況から復興させる必要があります。

復興の第一段階は「住まい」でしょう。

 

避難所から出てどこへ住むのか??

住宅ローンを抱えた状態で、住まいが津波被害で流失しても、基本的に住宅ローンは【そのまま】です(減免制度があるのですが、実はあまり知られていません…)

新しく家を建てるにしても、賃貸住宅に移るにしても、前の住宅ローンの返済が残っていますので、新しい住宅ローンや家賃との二重負担になります。

つまり、家計が圧迫されます!

 

家計が圧迫されると…

それでも何とか生活はできるかもしれません。しかし貯蓄ができない」のです。

新聞報道によると、東日本大震災で自宅を失い災害公営住宅に暮らす8%が、生活苦により家賃滞納となっているそうです。

【参考】「家賃滞納3億円超 生活苦」(静岡新聞より)

 

家賃滞納が続くと、最終的には退去しなくてはなりませんが、どこへ行けばいいのでしょうか?

別の視点で見ると、公営住宅の運営には税金が投入されています。家賃滞納(家賃収入がない状態)が続くとその分、自治体の税金投入(持ち出し)が増えます。

そうなると、人口減少でただでさえ厳しい自治体の財政にマイナスの影響をあたえ、子育てなどの他分野に使える税金が減少するでしょう。

 

住みつづけられる街なのか??

公営住宅の入居者は退去させられ、税金を必要な施策に充当することができず、自治体の競争力を奪っていく…。

その結果、普通に住んでいる人たちもその自治体に見切りを付け、近隣自治体などに転居してしまい、人口減少が加速する。人口減少で歳入がさらに減少し、一方で負担はそのまま…。

この状態ではとても「住みつづけられる街」とは言えません。

防災・減災だけでは不十分なのです。

 

「住まいの復興」という名の「引き留め策」

住みつづけられる街を作るためには「住まい復興の事前対策」がポイントではないかと考えます。

国の方針で国土強靭化で、防災・減災の取組みが進んでいます。それはそれで良いことだと思いますが、被災後にどこに住むかは「個人の自由」です。そしてそれは「自治体の問題」になります。

東日本大震災後に、せっかくかさ上げ地に区画整理をして宅地を用意しても、「3割が空地のまま居住者が見つからない」との新聞記事もありました。他所へ行ってしまった…ということです。

【参考】「かさ上げ地 空地だらけ」(日本経済新聞)

 

とても表現が悪いのですが、『被災後もその自治体に、住みつづけてもらうための【引き留め策】』についても、防災・減災と同じレベルで準備すべきだと思いました。