今回は経験談になります。似たような場面に出会うこともあると思いますので、ぜひ参考にしてください。

【長年住んでいる自宅がありますが、その一部が祖父の代から借地になっている。今般、地主が代替わりしたこともあり、売却してもらうよう交渉している。ただ、地主側から出された売却価格がどうにも納得がいかない。】というものです。

お話を伺ったところ、不動産業者が間に入って交渉しているそうです。それ自体は別によくあることなのですが、その不動産業者の査定書がトンデモないシロモノでした…。

市街化調整区域内であり、売買交渉をしている借地部分と家が建っている部分は「宅地」ですが、その周辺は「畑」になっていました。ではその査定書がどうなっていたかと言うと「借地部分(売買交渉をしている部分)+家が建っている部分(宅地)+周辺の農地」を含めて大きな土地とし、マンション適地として高い価格で査定書を作っていました。

市街化調整区域、すなわち駅から遠く離れた田舎であり、建築許可が取れるのか不明、仮に建築できたとしても採算は合わないですし、そもそも「農地」を転用許可が取れるかも怪しいのに、その辺は一切説明がありませんでした。

不動産業者が言うには「どこに出しても恥ずかしくない査定書」だそうです。こちらが知らないと思って…と依頼者は怒っていましたが、その気持ちも分かります。地主もこの査定書(高い金額)をすっかり信じてしまって、強気の価格交渉をしてきていたそうです。

そこで私から「地主・買主の折半で不動産鑑定評価を行う」ことを提案しました。そもそもマンション建築を想定すること自体が非現実的(ファンタジー)ですから。

その後、地主(と不動産業者)を通じて、「この査定書は不動産鑑定士のお墨付きを得ており、不動産鑑定評価書もあるから、この金額で正しい。」と言ってきたそうです。気になったので、「誰が評価したのか?」「不動産鑑定評価書を見せてほしい」と、依頼者を通じて聞いてもらうようにお願いしました。

そうしたところその日のうちに、依頼者(不動産業者)から私のところに不動産鑑定評価依頼の相談がきました…。さすがにこれにはちょっと呆れましたが、まあそんなもんなんだろうな、と妙に納得した面もあります。

さすがに、マンション適地としての価格(そんな高い金額)は出せないのでお断りしましたが…。

このような場面で不動産業者の査定書が出てきたら、まず私にご相談ください。その内容を吟味した上で「不動産鑑定評価」をご提案いたします。