人口減少時代になりました。またそれ以外にもメガバンクの人員削減や、AIに奪われる仕事はこれだ!的なニュースも目にします。人口減少は企業にとっても問題ですが自治体にとっても問題です。単純に税金を納めてくれる人が減る…だけではありません。そこで不動産鑑定士の立場で考えていることをお話しします。

「自治体は最大の不動産オーナー企業である」…自治体は市内全部の「不動産オーナー」であり「企業」です。ここではオーナーとは「市有地」の所有者という意味ではありません。民間企業や個人が所有している土地を含めすべての不動産のことを指します。「あれ、それだと不動産のオーナーは市ではなく、企業や個人じゃないの?」と思われるでしょう。単純に登記簿上の所有者(=オーナー)はそうですが、実際はそれぞれ市からレンタルしているのと同じです。なぜなら所有すれば固定資産税(市税)を払わなくてはならないからです。それなので市は、多くの土地を企業や個人に保有してもらいたいですし、有効に活用してもらいたいと考えています。

では、企業の価値を図るモノサシとして「株価」がありますが、自治体の価値を図るモノサシは何でしょうか?以前も書きましたが、それは「地価」です。毎年1月と7月に地価公示・地価調査を行いその結果が新聞の一面になることもあります。「銀座の土地が〇〇%上昇した」や「県内は下落傾向にある」などです。「地価」の下落は株価の下落と同じ意味でもありますが、地価が下落すると固定資産税収入の減少にもつながりますので、自治体にとっては深刻です。

「有効活用して地価を上げてもらいたい」のが自治体の本音でしょう。地価が下がる要因は様々ありますが、人口減少すると需要者も減少し、供給(絶対量)は同じですので、過剰になります。過剰供給になれば価格は下がりますので、固定資産税収入もさらに減少します。さらに、自治体間で市民獲得競争(生存競争)が起こる可能性も否定できません。

不動産の有効活用の度合いで自治体の魅力は変わります。つまり自治体にとって不動産は単なる土地や建物以上の存在であり、資源です。特に地方の場合は人口減少と真正面から向き合った上で、資源の有効活用を考えなくてはなりません。

私は不動産鑑定士として「この土地の鑑定評価額はいくらです」と評価するだけでなく、また自治体から仕事をいただくだけでなく、自治体と一緒に問題解決のお手伝いができ、地域に貢献していきたいと考えています。