- 不動産鑑定士の修了考査結果の発表 ~最終合格~
先週の金曜日に、不動産鑑定士の修了考査の最終結果発表がありました。この修了考査というのは、国家試験である不動産鑑定士試験を合格した後に待ち構える最後の関門です。この修了考査をクリアしないと「不動産鑑定士」にはなれません。 修了考査では何をするかというと、①指導鑑定士のもとで13件の不動産鑑定評価書を作成する、②ペーパー試験 ③口頭試問(面接) と3つがあります。それらに加えEラーニング、集合研修もありますので、結構モリモリとこなさないといけません。 上記①~③は、水準に達していないと落とされます。ただ、基本的に「落とす試験」ではないので、ちゃんとやってさえいれば何とかなります。忙しさにかまけて手を抜くと…見抜かれますので落第してしまいます。 この修了考査を一発でクリアする人の割合は、およそ3人中2人です。年によって差異はありますが、概ね65%です。国家試験である「不動産鑑定士試験」は、一次試験が約30%、二次試験が約13%で、最後の修了考査が約65%です。 単純計算はできませんが、同じ年に100人受験したら、最後まで到達するのは2名~3名程度です。そう思うとやはり難関な資格ですね。
- 特殊な画地の評価はお任せください
今年に入ってから、特殊な画地についての評価依頼をいただくことが増えてきました。依頼をいただく背景は、相続税であったり贈与税の計算にあたっての根拠資料としてです。 今回は特殊な画地な不動産は、不動産鑑定士に評価依頼をしていただいた方がいい理由をご案内します。 特殊な画地、と言っても様々な不動産がありますが、一言で表現すると「市場性に乏しい、売れないと思えるような不動産」です。 相続税、贈与税も納税者で税額計算して申告・納付しますが、不動産の評価額も同様に納税者側で算定しています。ただ、公平を保つために「財産評価基本通達」で、不動産の評価額を算定する方法が定められています。 原則はこの通達に沿った方法で計算します。ただ、原則なので「例外」も存在します。それは「特殊な画地」です。市場性に乏しいので売れないのですが、それでも通達通りに計算すると、まぁまぁ高い金額になってしまいます。 そこで役に立つのが「不動産鑑定評価書」です。こういう事情があって特殊な画地なので、市場価値は低いですよ…と不動産鑑定士が評価をしたものです。申告時はこの評価書を根拠に計算します。 特殊な画地の事例 ①広い ②形状が著しく不整形(旗竿地を含む) ③雑種地(特に市街化調整区域) ④区画整理予定地 ⑤土砂災害警戒区域、がけ条例適用地 など これらに該当するときは、市場性を著しく欠くことになる可能性が高いです。したがって不動産鑑定評価をおススメします。 「売れないから」と言って、著しく安い金額や無償で譲渡すると、「みなし譲渡」と判断され、後から税務署からお尋ね&けっこうな金額の所得税納付がくることもありますので、十分に注意してください。
- 接道要件を満たさない不動産の価値 ~理不尽なエピソード紹介~
今回は、過去に教えてもらった金融機関の友人から教えてもらった理不尽とも思えるエピソードを、リライトして紹介します。 友人は金融機関で働いています。その金融機関では住宅ローンも取り扱っています。ただ住宅ローンにも様々な種類があり、住宅ローンでも土地建物は担保に取らない、いわゆる「無担保」タイプの住宅ローンも販売されています。 無担保タイプの住宅ローンは抵当権設定が不要なので、利用する側からしても抵当権設定に係る諸手続きや費用が省けるメリットがあります。金融機関側も物件調査を行う手間や費用が省けます。それでも金融機関では融資にあたって売買契約書や重要事項説明書等の書類が必要になることもあるのですが、今回は最終的に住宅ローンを利用しなかったため起きてしまったトラブル未遂(?)のお話です。 このお話は、金融機関で働く友人が、物件資料も持ってこなかった顧客から「個人間売買で住宅ローン利用ができるか」の相談を受けただけなのに、理不尽なクレームを受けたものです。 結論から言うとその顧客が買おうとしていた不動産は、「接道要件」を満たしていなかったため、住宅建築ができなかったということです。間に不動産業者なりが入り宅建士が重要事項説明をしていれば、または不動産鑑定士などの専門家に調査を依頼すれば簡単に防げたことでしたが、個人間売買ということもあり、そこまでやらなかったそうです。 本来であれば買主が売主に対し錯誤無効(民法95条)なりの裁判を起こして契約そのものをなかったことにすればいいのですが、なぜか矛先がその友人に向いてきたそうです。理由が「相談時に、この土地は接道要件を満たしておらず、建物建築できないから融資不可と言ってくれれば、この物件の購入はしなかった。」からだそうです…。 実際のところどうなのだろうかと思って調べてみたら、最高裁の判例【平成14(受)458】が出ていました。長いので要約すると 「基本的に、金融機関の職員に接道要件を満たしていないことを説明する義務はない。」になるでしょう。ただ、担保価値という意味では接道要件を満たすことが必須になるので、もし物件調査の時点で接道要件を満たさなかったら顧客に話はするでしょう。 ただ、友人は相談を受けただけで物件調査をしたワケでも融資をしたワケでもないので、なぜ言ってきたのかは不明です。きっと「言いやすいところに言って、補償してくれたら儲けもの」程度だったのかもしれません。言われた方はたまったものではないですが…。
- 老後の年金不足は“不動産投資”で補えますか?
少し前に新聞やテレビを賑わした老後資金2000万円問題について、今回は不動産の切り口でお話します。 「年金不足を“不動産投資”で補うことは、本当にできますか?」という質問を受けました。その方には「これから年金だけでは生活資金が不足する。だからこそ今、都心のマンションを買って、その家賃収入で年金不足を補いませんか?」というセールスがあったそうです。 私の回答は「できると言えばできますが、できないこともあります。ただし、電話営業で都心のワンルームマンションを買いませんか?という話があっても、私ならきっぱりお断りします。」です。 地方の個人に電話営業している時点で、不動産投資のことをよく分からない個人にしか売り先がないのかなと思ってしまいます。本当に稼いでくれる優良物件は、プロの不動産投資家がとっくに抑えているはずですからね。ただそれを言うと身も蓋もないので、チェックポイントを少しだけお教えします。そして不動産投資をしようとするのであれば、購入前に最低でも1回は現地に行きましょう。 「空室リスク」 この手の投資話は都心にあるワンルームマンションの一部屋を購入し、その部屋を貸し出すことで家賃収入を得るという仕組みです。一部屋だけですので、空室率は「100かゼロ」になります。当たり前ですが、空室になったら家賃収入はゼロです。 最低でも近隣の似たようなマンションの空室率は調べましょう。 「収益低下リスク」 一般に年数が経過すると建物は老朽化し、設備や仕様が時代遅れになります。そうなると家賃を低くしないと借りる人がいません。さらに修繕積立金の値上げや、修繕費の不足分の一括支払いがあるでしょう。家賃収入が減少し、支出が増加するため収益が悪化します。 近隣マンションの築年数と家賃相場の相関関係を調べておきましょう。 「負動産リスク」 収益性が悪化したため売却しようとします。そんな収益性の悪いワンルームマンションの、しかも一室だけ…誰が欲しがるのでしょうか?売却金額をかなり下げないと売れないでしょう。それでも売れたらまだいい方です。相続まで売れ残り、配偶者や子供に迷惑がかかるかもしれません。 細かいことを言うとまだあるのですが、年金不足を家賃で補うどころか、年金で赤字の補填が必要になる可能性もあります。またローンを組んで購入した場合には、教育ローンなど他のローン審査に通らず、必要な資金が借りられなく可能性もあります。 私の前職時代の経験ですが、大手企業勤務の方から焦った感じで電話を受けました。内容は「ワンルームマンションを契約した。明日までに手付金を払わないと話が流れる。すぐに住宅ローンを組みたい。」というものです。 そもそも投資用のワンルームマンションなので、住宅ローンの対象外です。住宅ローンは「自分が住むため」が最大の前提条件です。「自分が住むことにして、借りられないか?」とも聞かれましたが、それは金融機関相手の詐欺になることをお伝えしました。 不動産投資は利回りがいいのですが、その分なにかと管理が面倒ですし費用もかかります。その分を回収しないといけないので、当然ですが利回りを高くしないとペイできません。 「不動産投資は利回りがいいから」というセールストークだけで判断しないでください。今は日経平均も過去最高値になっていますので、さらなる利益を目指して不動産投資の勧誘も増えてくるだろうなと思っています。
- 他人の不動産は売れるのか? ~他人から預かった時計は売っている~
トケマッチの代表者が指名手配されたニュースが大きく報道されています。他人から預かった時計を勝手に販売していますが、そもそも他人のモノを売れるのでしょうか? そして「他人の不動産、例えば借りている土地を勝手に売買することはできるのでしょうか?」 そんな質問がありましたので、簡単ですがお答えします。今回は、トケマッチと同じ状況下として、腕時計と不動産の違いについてお話しします。 基本的に日本の民法では「善意の人」を保護する仕組みになっています。ここでいう「善意の人」とは、「他人のものであることを知らなかった、かつ知らなかったことについて落ち度がない人」のことを指します。 この反対にあるのは「悪意の人」になります。これは「他人のものであることを知っていた、または知らなかったが、知らなかったことについて大きな落ち度がある人」です。 以下、腕時計と不動産について、「他人の物を買った人」からの視点でお話しします。 ①腕時計の場合 トケマッチを例に取ると、腕時計は「本当のオーナー」が仲介業者を介して借り手に渡りました。借り手から返却された腕時計を「本当のオーナー」に返却せずに、仲介業者がオークション等で売却したと仮定します。 この場合は、購入者がその時計の「本当のオーナー」を知っていたなら、民法では「善意の人」に該当しません。したがって保護されませんので、本当のオーナーに対抗するのは厳しいです。 逆に「知らなかった、かつ知らなかったことについてい落ち度がない」場合は、「善意の人」になりますので、民法で保護されます。したがって、本当のオーナーから訴えられても、もう自分のモノであると主張できます。 なぜなら、購入者はその時計のオーナーが誰かを事前に調べる術がないからです。シリアルナンバーがあるとは言うものの、それだけではどうしようもないのも事実です。 ②不動産の場合 この場合も、購入者が「本当のオーナー」を知っていた場合は、腕時計の場合と同様です。 問題は「知らなかった場合」です。不動産の場合は、法務局に行けば「登記情報」を誰でも取得することができます。したがって、事前に登記情報を調べようと思えばできたのに、それをしなかったら「大きな落ち度がある」となる可能性が高いです。 この場合は「善意の人」にはなりません。したがって民法で保護されない可能性が高いです。つまり購入した不動産を手に入れることができなくなる、ということです。 ではこの場合は泣き寝入りしないといけないのでしょうか? こうなった場合には「契約不履行」になりますので、買主は売主に対して「債務不履行による損害賠償」を請求することができます。 ただ、いずれにしてもこのようなトラブルには巻き込まれたくないものです。不動産の場合には、自分で調べられることもあるので、事前に十分に調べるようにしてください。