お客様とお話をしていると、様々な事情を教えていただけます。空き家で悩んでいる方も同じです。私とお話しする前に、本や週刊誌等で情報を得ていますので、予想もしない質問をされます。最近は「情を断ち切る方法を教えてください」です。男女間の感情のもつれは私の専門外なのですが…。
詳しくお話をお聞きすると「実家が空き家になっている。周囲も空き家になり、どんどん売れなくなっているので、早く処分したい。でも、情が残っているとかで動き出そうとしない。ハウツー本を読んだら”すっぱりと情を断ち切ること”と書いてある…どうしたらいいですか?」という内容です。
そのハウツー本もどうかと思いますが、今はそれは置いておきます。実家には、親からすれば子育ての想い出、苦労して返済した住宅ローンなど、「家族の象徴」です。一方、子供からすると「子供のころの想い出」です。兄弟が何人かいればそれぞれに想い出があります。そんな簡単に情を断ち切れるものではありません。
私の返答は「情を断ち切る方法はありません」です。元から情がなければ、断ち切るものもありませんが、もし少しでも情があるようであれば「すっぱり断ち切る方法」を探すのは無駄でしょう。ただし、「情を断ち切るのではなく、違う形で引き継ぐご提案」ならできます。
例えるならば、”愛情”を指輪にする結婚指輪しかり、子供への愛情を「フォトアルバム」に…です。住宅であれば「不動産鑑定評価書」にです。家族の象徴ですから、しっかりした形で残すべきでしょう。住宅はそのままの形で残すことはできません。いつかは朽ち果てます。
国家資格保有者である不動産鑑定士が、しっかりと家族の象徴であるご自宅を評価させていただき、「不動産鑑定評価書」をお作りします。住宅に込められた思いは「不動産鑑定評価書」という形でいつまでも引き継ぐことができます。子供たちの人数分作成できますので、みんなで実家の想い出をいつまでも共有しましょう。
さらに、この鑑定評価額は遺言のシーンでも使えます。実家の不動産鑑定評価で「想い」をつなぎ、さらに家族で相続について話すきっかけにもなります。「情を断ち切る」という、ともするとネガティブな表現よりも、「情をつなぐ」の方が、みんなが幸せになります。